スタッフワークショップ レポート②

「札幌演劇いまとこれから」にて開催したスタッフワークショップ、制作編のレポートです。

【制作ワークショップ】
制作ワークショップでは、3人の講師により、制作全般について、広報について、当日運営についての3コマを実施しました。


まずは制作の仕事全般についてを小室明子が解説。制作の仕事として考えられるものを図解で説明。団体によって守備範囲は変わりますが、劇場や稽古場の手配、予算立案、キャスティング、票券管理、各種打ち合わせのセッティング、チラシ作成及び配布、広報、当日運営など、公演の立ち上げから公演終了後の各種支払いまで、長期間かつ多岐に渡ります。もちろん、その全てを制作者一人で担えということではなく、劇団であればメンバーで分担しながら、あるいは一部を外部に振るなどしながら、滞りなく進むように目配せすることが重要です。

お客様に関わること、上演に関わることなど複数ある中で、制作の仕事の肝だと考えているのが「予算の進行管理」といいます。どこにどれだけ予算を割くのかはもちろん、チケットの売れ行きが芳しくない時、あるいは予想外の事態に直面した時に臨機応変に対応し、経済的な最悪の事態を回避する腕力が必要とされます。

その多岐にわたる仕事内容と一人で担当することが多い環境から、孤立し自分を追い込んでしまい演劇の現場を離れていく人も少なくないと思われます。誰かの犠牲の上に成り立つ公演は成功ではありません。滞りなく公演が進むように、という中には自分の心身の健康についても気を配っていくことも重要といいます。

仕事を一人で抱え込まない。自分が潰れないことも大事

2コマ目は広報について。小島達子が過去から現在まで関わっていた公演の広報について具体例を挙げながら紹介。広報は何のために必要か、という問いかけから始まります。

演劇を始めた頃に所属していた劇団では、「公演を成功させるためにはチケット収入が第一」と教わってきたといいます。その劇団で、1000人程度の集客から公演をやる度にお客様が増えていき10,000人を超えるに至るまで。その後、人気のある主要のメンバーの脱退により下降線を辿って行ったこと、現在所属する劇団に移籍後は400人から再スタートし、札幌演劇シーズンに参加した「あっちこっち佐藤さん」「12人の怒れる男」で4000〜5000人を集客するという経験を語っていただきました。

ELEVEN NINSに移った頃、広報について本格的に考えるようになったといいます。
観客を増やす方法として「キャスティング」「作品の題材選び」「話題性の有無」「会場選び」「宣伝美術」を挙げています。「あっちこっち佐藤さん」では芸能人をキャスティング、人気俳優を揃えた「12人〜」では50年代の原作映画の影響か高年齢層のお客様がグッと増えたそうです。

広報でできることとして、無料で使えるSNSは全てやる。毎日、目に触れるようにネタづくりも欠かさず、アフタートーク、グッズ情報、インタビュー動画などを小出しにしていく。その他、街頭ビジョンでの告知や広告集め等も行っていますが、スター俳優のいない公演の場合は特に、一番はやっぱり「劇団員の手売り」。手売りをやらなくなったらダメになると力説します。身の回りの人たちに勧められないようではどんな広報を行っても集客は増えないということでしょうか。

自分の集団がどうなっていきたいのかを考え、みんなが同じ方向を向くこと

集客のためには公演のための広報だけでなく、公演がない時期の広報も重要で、ELEVEN NINSではインスタライブの「しゅーいち(週1)イレブンナイン」、ファンクラブ向け企画などを行っているそう。現在、札幌で随一の集客数を誇るELEVEN NINS、その理由の一端を垣間見た気がします。

続いて3コマ目は、当日運営についてです。講師の竹内麻希子さんは大学時代から演劇を始めましたが、卒業後、仕事をしながら自分のペースで携われることで当日運営を中心に制作に関わるようになったそう。

当日運営の仕事を「開場前」「開場中〜開演中」「終演後」と場面に分けて解説。開場前にはまずスタッフの人数と役割を確認し、受付をどう設置するかや座席の準備、そしてお客様に聞かれがちなこと〜トイレや喫煙所の場所、飲食・撮影の可否の確認を行います。開場中〜開演中には当日精算、もぎり、客席への案内、差し入れの受け取りのほか、チーフの役割では役割を持たずに全体に目を配る必要があります。開演後には遅れてきたお客様のスムーズな誘導、集客数や売上の確認、終演後のグッズ販売の準備等。終演後にはお客様のお見送り、忘れ物の確認、場内の片付け等があります。

当日運営は接客業。目立ちすぎず、隠れすぎず。
言葉遣いにも気を配り、お客様を不快にさせない。

最後は参加者たちと客席案内の実践。3人1組になり、客席案内スタッフ、通路側の席に座っているお客様、後から来たお客様と役割を変えながら、後から来たお客様を座っているお客様の前を通って案内する際にどんな声掛けをすべきかを考えました。竹内さんからのアドバイスも受け、どのチームも積極的に意見交換を行なっていました。

舞台技術編同様、改めて学ぶことの重要さを感じたと同時に、孤立しやすいと言われる制作者たちの交流の場となったことも有益であったと感じています。

DATA

「札幌演劇いまとこれから」スタッフワークショップ 制作編

講師:竹内麻希子(CAPSULE)、小島達子(ELEVEN NINES/tatt Inc.)、小室明子(ラボチ)

参加者:14名